足関節捻挫

足の捻挫(足関節及び足部の捻挫)は外傷の中でも頻度が高い損傷です。日常生活の局面でも、段差がある場所で転倒したり、ハイヒールを履いて足首をねじったりして捻挫をすることはよくあります。

足関節は構造上、うちがえしで大きく動くので痛めるのは外側のほうによく起こることが多いのです。つま先が下を向いた状態で足首を内にひねる動作で過剰な力が加わって捻挫することが最も多く、その場合には足首の外側が伸ばされて外くるぶしの前方と足の距骨をつなぐ前距腓靭帯や程度が強ければ足首の外側の別の踵腓靭帯 をさらに損傷します

 足関節捻挫で最も多いケースがスポーツ中のケガです。特にバスケットボールやバレーボールなどの跳躍動作の多いスポーツをしている生徒や学生によくみられます。治療せずに放置すると、何度も捻挫を繰り返すようになることもあるので、注意が必要です。

 

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図:足部の靭帯

 さらには足のひねり方によっては、足首の内側の靭帯(三角靭帯)や足の甲の部分の靭帯(リスフラン関節靭帯)を痛める場合もあります。

 

」また、受傷機転が同じようであっても靭帯の損傷に止まらずに骨折が起こる場合があります。

 子供では特に靭帯が断裂するかわりに靭帯の付着する骨の表面が剥がれる剥離骨折という状態になる場合が多く、レントゲンでは骨折はわからないが、エコ-を使ってやっとはく離した骨片が分かるものがあります。たかが捻挫と侮っていると重症の怪我の治療が遅れて後遺症を残す場合もあり、注意が必要です。

[ 症状 ]

足関節や足の痛みによって歩きにくくなります。損傷した部分を中心に腫れて皮下出血により色が変わります。

足関節捻挫はその重症度によって、1度から3度に分類されます。

1度の捻挫は靭帯が伸びる程度の損傷、

2度の捻挫は靭帯の一部が切れる程度、

3度の捻挫になると靭帯が完全に断裂します。完全断裂にを起こした場合、外くるぶしのあたりに赤黒く腫れてまともに歩くことができなくなります。
時間が経過すると腫れや皮下出血は広い範囲に広がります。

靭帯が完全に断裂した場合は、関節が不安定になり、適切な治療を行わなければ後に捻挫を繰り返したり、関節表面の軟骨を損傷したりして、日常生活やスポーツ活動に障害をきたす場合があります。これを足関節不安定といいますが、あとで解説します。

 

[ 診断 ]

受傷機転(足の位置がどうであったか、どの方向にひねったか)が損傷部位を判断する助けになります
損傷した部分は押すと痛みを感じます。損傷した場所と程度を確認するために医師は患者さんの痛い部分を押して確かめます。

 また関節が不安定になっていないか確認するためにストレス撮影というレントゲン検査をする場合があります。これは足首を内反、前方移動した状態でレントゲン撮影するもので、それで関節が異常な動きをしないか確かめます。

 

靭帯の損傷程度を確認するためや、レントゲン検査で評価できない骨の内部の状態と軟骨の損傷状態を確認するためにエコ-検査を行う場合もあります。

[ 治療 ]

 

応急処置

関節捻挫など、ケガの応急処置の基本はRICEといわれます。治療法を英語で言った時の頭文字を取っています。すなわち、「Rest(安静)」「Ice(冷却)」「Compression(圧迫)」「Elevation(挙上)」の4つを指します。


 REST*基本は安静にして患部を動かさないようにすることです。できれば横になってしまいましょう。

 

ICE*次に氷水を使って患部を冷やします。急激に冷やすことで足首の血管を収縮させ、一時的に血液の循環を悪くすることによって、内出血や炎症を抑えます。冷やして感覚がなくなったら少し休み、痛みが出たらまた冷やす、を繰り返します。1時間のうち20分を冷やしその後はそのまま安静。これを繰り返します。

 

COMPRESSION

*患部を包帯やテーピングで圧迫することによって、出血や腫れを抑えます。ただし、指先が紫色にならないよう、圧迫のし過ぎには気をつけましょう。

 

ELEVATION

挙上といって、足首を心臓よりも高くすることで、内出血を防ぎます。

 


 足関節捻挫の治療の基本は保存療法(手術以外の治療)です。


保存療法

ギプスなどによる固定療法と早期運動療法があります。

1度の捻挫ではテ-ピングやシップによる治療を行います。

2度で靭帯を損傷しているような場合、足首がグラグラするような不安定感が現れます。このような場合には、よりきっちりと固定を行います。装具やテ-ピングによる固定があります。

3度の足関節捻挫で靭帯損傷がひどいような場合やはく離骨折を伴うような状態には、ギブスによる固定を行います
固定療法は数週間のギプス固定を主体とした治療方法です。

 

早期運動療法は、怪我の初期に短期間固定を行ってから早い時期にサポーターでの歩行を開始し、足関節の外側に負担のかかるひねり動作を防御しながら積極的にリハビリを行う方法です。
  

 

 リハビリでは腫れと痛みで動かしにくくなった足の動きを回復させ、足関節周囲の筋力を強化して関節の安定性を高めます。
炎症や痛みを早めに取り除くように超音波治療を併用し、必要なケースではテーピングの指導も行います。
また、リハビリのメニューで自宅でも行えるものは覚えて自主トレーニングとして行うことが重要です。
サポーターは入浴時や歩かない時にはずすことができ、上から靴を履くことも可能です。
サポーターの使用期間やスポーツの復帰時期は運動内容やけがの重症度に左右されるので、定期的に診察しながら医師がアドバイスします。

 手術療法
手術の内容は、靭帯修復術や各種の靭帯再建術などの方法があり、関節の状態に応じて選択します。
手術を望まないケースに対しては、リハビリによる関節周囲の強化、運動場面などでテーピングやサポーターを使用するという方法で対処します。
また、捻挫に合併して関節表面の軟骨が損傷した場合、断裂した靭帯や剥がれた軟骨が関節内ではさまる場合などで痛みが持続する場合があります。
この場合、内視鏡を使用した手術を考慮します。 

 

足関節捻挫の固定を行っている間も、筋力が落ちないように足の指先を動かすリハビリを行います。また、固定後は足の感覚が低下しているので、足の指でビー玉をつかんだり、タオルをつかんだりする運動を行ったり、筋力低下を回復させるための筋トレもおこないます。

 

リハビリテーション

修復過程に合わせて適切な運動療法を行ないます。腫れや痛みで動かしにくなった⾜の動きを回復させ、⾜関節の筋力強化、テーピング指導、セルフトレーニング指導を⾏いサポートしていきます。また、当院では治療プランに沿って、スポーツ選⼿の患者さんにはスポーツ特性を考慮したトレーニングを指導します。

スポーツ復帰の時期や、治療内容などはアドバイスをしていきますので、

お気軽にご相談下さい。

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           部活をやっているお子さんをお持ちのお父さんお母さん、もしもお子さんが足首をねんざしたら、きっちり治るまで病院に通うように指導してあげてください。特に最初の捻挫ほどきっちりと治しきることが非常に重要です。痛みがなくなっても、それが「治った」という訳ではありません。
 当院では早期治療療・早期復帰を⽬標として、損傷程度に合わせて数⽇〜2、3 週間ギプス固定をします。固定をする事で組織の治癒促進、再損傷のリスクを減らし、より早く競技復復帰を⽬指します。固定により筋力低下を不安視する患者さんもおりますが、固定除去後は、⽇常⽣活・スポーツ復復帰に向けてリハビリテーション(関節可動域訓練、筋⼒増強訓練、動作指導)を積極的に⾏ないます
 

足関節捻挫の後遺症

足関節不安定症

捻挫の治療が早期に適切に行われなかった場合や、患者さんが諸事情で治療を受け入れなかった場合に関節の不安定性や痛みが残ることがあります。足を捻挫するとよく、「くせになる」と言ったりするのですが、捻挫自体がクセになるわけではなく、足首の関節が不安定になってしまうことによって、捻挫を再発しやすくなるのです。その障害の代表的なものが、足関節不安定症で長期間が経過した後に関節の不安定性が残った場合には、保存的治療で十分に改善させることは困難です。

足関節捻挫の予防 

 

テーピングは、ケガをした後に行われるだけでなく、ケガの予防や、筋肉のサポートを行う上でもよいと思います。