変形性膝関節症はどのような病気?

 

健康な膝関節は弾力のある関節軟骨でおおわれています。この関節軟骨が膝にかかる衝撃を吸収してくれているのです。また、膝関節全体を袋状に包み込んでいる関節包には関節液が満ちており、このおかげで膝がなめらかに動かせるようになっています。

では、変形性膝関節症を発症すると、この膝関節にどのような症状が現れるのでしょうか。

初期の段階では、自覚症状はほとんどありません。たとえば、朝目覚めた時には膝の違和感がある程度ですが、徐々にしゃがんだり立ち上がる時に痛みが生じるようになります。。しかし、しばらく安静にしていると痛みは治まるのが特徴的です。痛みが一時的なものなので、初期段階で病気として認識しづらいでしょう。

 

はじめの症状は階段の昇降時や歩行に最も問題が表れることが多いようです。
逆に、夜間の痛みや、じっとしているときの痛みなどはほとんどありません。
軽度の方は、疲労感や重い感じ、立ち座り時の痛みなどが多いようです。

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加齢によって膝関節にある軟骨は少しずつクッション性を失い、すり減っていきます。すり減って弾力を失った軟骨では膝の動きも悪くなりますし、膝にかかる衝撃も十分に吸収できません。これが、関節痛の原因になるのです。

痛みを持った人は自然と運動不足になるので、脚の筋力が衰えて膝への負担が増加します。

 さらに、症状の進行と共に関節が変性して炎症を起こし、関節の腫れや水が溜まるなどの症状がでてきます。

 関節軟骨が摩耗してゆくと骨が部分的に露出しはじめ、露出した骨自体が衝撃を受けて変形していきます。ここまで症状が進行すると安静にしていても痛みがあります。

 

変形性膝関節症の発症は50歳以上の男女によく見られ、とくに女性は40歳代から発症し始めます。女性の場合は60歳代なら約4割、70歳代で約7割の人が発症しているというデータもあるほど、女性に多い病気です。これは女性のほうが筋力が弱いのと、ひざの内側に荷重が加わりやすいというのが原因と考えられます。

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 正常        変形性膝関節症

 

このような人は変形性膝関節症になりやすい

加齢や肥満、運動不足、O脚、膝の酷使などいくつかの要因が複合的に重なり合って変形性膝関節症は発症すると考えられています

 

(1)女性

60歳以上になると女性の発症率は男性の1.5〜2倍になります。

(2)肥満

体重が増加した分、膝への負荷がダイレクトに増加するのが問題です。体重が増えれば膝にかかる負荷は3倍になるといわれています。

(3)O脚

日本人はもともと膝の内側に負担がかかりやすいO脚が多い傾向があります。そのため、変形性膝関節症になると膝の内側の軟骨がより強く摩耗し、それに引き続いて関節内側の骨が変形し、O脚が強まるでしょう。

(4)筋力不足

運動不足によって大腿四頭筋などの脚の筋力が低下すると、膝に負担がかかるようになります。

(5)高齢

関節軟骨は加齢とともに変性することから、年齢が上がるにつれて発症者数が増加する傾向にあるのです。

(6)激しいスポーツをしている・していた

スポーツや肉体労働などで膝を酷使した場合にも発症しやすくなります。

(7)過去に膝にケガをしたことがある

事故などによって膝の骨折や靱帯損傷などのケガをしたことがあると、症状が出やすくなります。

 

 

変形性膝関節症を予防するには?

変形性膝関節症の発症を防ぐためには、常日頃から膝に負担をかけない生活を心がけましょう。

そして、次にご紹介するトレーニング法を行って足の筋肉を鍛えてください。

 

すでに膝に違和感や痛みがある人は、無理に運動をしないで専門医に相談しましょう。

 

膝の水を抜くと癖になる??

水を抜いても癖になることはありません!!

 

よく聞かれる質問ですが水を抜くからたまるのではなく膝の炎症が続いているから水がたまるのです。膝の中に多く水がたまると膝の関節の動きが悪くなるだけでなく、ひざの痛みや違和感となります。また関節液の状態を見ることによって原因となる病気の原因を確かめることもできます。水を抜くのは症状を和らげる意味と検査の意味があるのです。

 

肥満の解消と筋力トレーニングが治療の第一歩

 変形性関節症は、問診、視診、身体所見、そしてX線(レントゲン)写真で診断します。ただし、関節軟骨の摩耗が進んでいても痛みをあまり感じない患者さんもいたり、逆に摩耗があまり認められないのにもかかわらず強い痛みを感じる患者さんもいたりするなど、レントゲン画像の所見と症状は必ずしも一致しません。また、変形性関節症に似た症状のある関節リウマチと見極めるため、血液検査も行います。

 擦り減った軟骨や変形した関節は、残念ながら元には戻りません。ただし、早めの受診による適切な治療で、痛みや腫れの症状を軽減し、進行を最小限に抑えられます。

 患者数が多く、歩けない、動けないなど生活への影響が非常に大きい変形性膝関節症や変形性股関節症に関して言えば、治療の第一歩は、筋力トレーニングと減量です。まずは、適切な食事療法と運動療法で減量しましょう。関節を動かさないでいると、痛みが悪化することもあります。関節周りの筋肉を鍛えることで、関節にかかる負担を軽くできます。特に、膝には体重の3倍荷重が掛かります。

 

 変形性膝関節症の場合は太ももの前面側の筋肉、大腿四頭筋を強化しましょう。椅子に深く腰かけ、5秒間くらいかけて、足首、膝、太ももが垂直になるよう、ゆっくりと片足を上げていきます。膝を伸ばした状態で5秒静止し、5秒間くらいかけてゆっくり片脚を下ろしていきます。これを1セットとし、時間を分けて合計1日100回~200回行います。このトレーニングは、変形性膝関節症の治療法でもあり予防法でもあります。また体重がかからない状態での運動訓練や歩行訓練も良いと思います。例えば自転車こぎ訓練、プ-ルでの歩行は膝に体重がかからないので、推奨されます。

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 その他、症状をより悪化させないための治療として、痛みを和らげ、関節の機能の悪化を防ぐために、鎮痛消炎剤などの内服薬、湿布剤などの外用薬が適応されます。

 

:グルコサミンやコンドロイチン硫酸などのサプリメントは、変形性関節症に対する有効性が十分には証明されていません。また飲むヒアルロン酸は強力な胃液で分解されてしまうため、直接膝関節への有効性はないといわれています。ヒアルロン酸なら関節内注射で治療しましょう。

 

ヒアルロン酸の関節内注入

その点ヒアルロン酸の関節内注入は直接ヒアルロン酸をそのままの形で関節に届けることができ、エンジンのオイルのように関節の動きを滑らかにしたり、ひざの衝撃を緩和したりします。ヒアルロン酸は軟骨成分や関節液成分の一つです。高分子ヒアルロン酸は粘性が高く潤滑油として有効に働き痛みを抑え軟骨の保護を促します。

 

保存療法の種類と方法

比較的症状の軽い初期から中期に用いられる治療方法です。

基礎療法(生活指導)

治療の第一歩は日常生活における膝への負担をできるだけ軽減すること。そのため、生活全般における指導を受ける療法です。

たとえば、太り気味であればダイエットが必要ですし、過度な運動で膝を酷使している場合には運動量を減らすなどして改善します。また、正座ではなく椅子、布団ではなくベッドを使った洋風の生活様式への切り替えもポイントです。

運動療法(リハビリテーション)

膝の曲げ伸ばしができるようになること(可動域訓練、ストレッチング)と、太ももと膝周りの筋肉を鍛えて体重を支えるための筋力をつけること(筋力訓練)のふたつが目的です。

自分の症状にあった方法を見つけて、無理せずに毎日続けていきます。コツは体重がかからない状態での運動訓練を選んで行います。

前述の手軽な下肢挙上訓練から水中ウォーキング、自転車こぎなど方法はさまざまです。

 

物理療法

運動以外の物理的な手段によって運動機能の活性化を図る理学療法です。

温熱療法によって血行を促進したり、冷却療法で腫れや痛みを和らげたりするほか、レーザーやキセノン波、マイクロ波の照射、あるいは低周波や干渉波で症状の改善を図ります。

 

薬物療法

主に痛みの症状を和らげるための非ステロイド性の消炎鎮痛剤と、予防効果もある注射によるヒアルロン酸などを用いる療法です。

消炎鎮痛剤には一時的な炎症を抑えるための塗り薬や貼り薬などの外用薬と、痛みが強い時に用いる内服薬や座薬があります。

 

ヒアルロン酸は関節軟骨や関節液に不足している成分なので、関節に直接注射して補うと効果的です。膝の炎症や痛みがひどい場合には、ステロイド剤の注射をすることもあります。

 

最近ではサインバルタという慢性疼痛に効果のあるお薬が、変形性関節症にも適応が取れ、服用後2-3週目には疼痛抑制効果が期待されています。 

 

また最近には貼り薬で変形性関節症に特化した効果をうたっているものがあります。

装具療法

膝を安定させるために行うのが、装具療法です。膝に巻くタイプのサポーターやテーピング、靴のように履くタイプの足底板、杖などのほか、症状に合わせて個別に装具を作る場合もあります。

サポーター

手軽に購入できて着脱が簡単な装具が、サポーターです。膝に巻くことで膝の安定感が得られます。大きく分けると固定性と伸縮性の2種類あります。面テープなどで膝の太さに合わせてサイズ調整ができるものを選ぶと、膝関節の固定には便利です。伸縮性タイプのものは主に保温目的で使用します。

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足底板

足底に装着するか靴の中に入れて使う装具です。膝の内側にかかる負担を軽減し、O脚を矯正する目的で使用します。変形が強くない、比較的軽い症状の時期に有効とされています。足裏にしっかりとフィットさせるため、足底板は基本的にオーダーメイドです。

この足底版は膝の内側に体重がかあるのを防いでo脚を矯正する意味があります。

当院では毎週水曜日午後に装具士が来院して採型を行うようになっています。

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機能的膝装具

金属やプラスチックでできた支柱のある装具です。膝関節の安定を図り、痛みをやわらげる効果が期待できます。機能的装具は、シンプルなものから複雑なものまでさまざまなタイプがあります。複雑な構造をしていると膝関節を安定する効果が高いのが一般的ですが、高価なうえに着脱が面倒という面もあるので、どちらがよいかは一概に言えません。

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歩く時や立ち上がる時に体重を分散できるので、膝へかかる負担が減り、痛みが緩和されるでしょう。また、転倒予防の役割もあります。松葉杖など種類が豊富ですが、日常生活において使用するにはT字杖が一般的です。

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三つの代表的な手術法

 このような治療を行っても症状の改善が認められない場合には、外科的治療を行います。それぞれ進行具合により、治療方法が異なります。

 初期の場合、「関節鏡視下手術」という内視鏡を使った手術を行います。これは主に膝関節に適応され、皮膚を2カ所小さく切開して、片方に内視鏡、もう片方に切除用の器具を入れて、関節内の洗浄、骨棘、異常増殖した軟骨、変形した半月板の切除などを行います。

 

中程度進行した場合には、骨切り術が適応されます。主に膝関節と股関節に適応される手術法です。関節近くの骨を切って骨の形状や位置を矯正します。

比較的若い世代の方で、関節の片側だけが変形して、疼痛が強く、保存的治療に抵抗する人に適応されます。

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痛みが強く、なおかつ関節軟骨が完全に擦り減ってなくなっていたり、高度に変形したりしている重度の症例には、人工関節置換術を行います。痛みのある関節軟骨の表面を取り除き、特殊な金属やプラスチックなどを素材とした人工関節に置き換える手術で、膝や股関節に適応されます。手術後には痛みがほぼ完全に取れるため、日常生活に支障をきたしている方に適しています。

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 現在、正常な軟骨組織と滑膜組織を少量採取して培養し、軟骨の欠損部に移植する再生医療の治療も一部始まっており、治験を行っているものもあります。ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)から軟骨細胞を作製する研究が進んでいますが、いまだ変形性関節症を治療できるまでには至っていません。軟骨が摩耗する前に、標準体重を目指して減量し、筋肉を鍛え、軟骨への負担を減らすことが何より大切です。