膝後十字靭帯損傷

症状

後十字靱帯損傷では、急性期に痛みや腫脹が生じますが、その症状は早期に落ち着きます。
症状としては前十字靱帯損傷とほとんど同じで、膝に不安定さを覚えることがあります。
ただ、前十字靱帯損傷ほどの不安定感は無く、全く運動ができなくなるようなことはありません。

急性期の症状

  • 膝に腫れや痛みがある。多くは膝関節内に多量の液体貯留【多くは血腫】が起こります
  • 膝関節ノ動きが制限され動かすと痛みを生じます。また足をつけて歩きにくくなります。

慢性期の症状

  • スポーツ活動中、膝が不安定感を生じます。グラグラするような感じをうけます。
  • 膝の後ろ側に痛みを覚える。

後十字靱帯とは?

「後十字靭帯損傷」の画像検索結果

後十字靱帯は膝を支える4本の重要な靱帯のうちの1つで、PCL(ピーシーエル)と呼ばれます。
膝の中央部の前十字靱帯(ACL)と交差する位置にあり、脛骨(すねの骨)の後方から大腿骨(太ももの骨)の前方へと走る太い靱帯です。
この靱帯は、膝関節の回旋の中心軸として機能し、脛骨の後方移動を制御する役割を果たしており、前十字靱帯と合わせて膝関節の動きをコントロールしています。

主な原因

 

 

後十字靱帯は前十字靱帯損傷よりも起こる頻度は少なく、ほほど大きな力が加わらない限り、損傷することはありません。
しかし脛骨が大腿骨から後ろ方向にずれるような強い力が加わった時などに起こります。
主に、ラグビーなどの接触が激しいスポーツやスキーなどで膝を強く打った場合に損傷します。
また、交通事故の際に車のダッシュボードに衝突したり、転倒して直接膝関節に強い力が加わったりした時に損傷してしまうケースもあります。

 

「後十字靭帯損傷」の画像検索結果後十字靭帯付着部の断裂(脛骨が後方にずれる方向に外力が作用)

 

 衝撃が強かった場合には、後十字靱帯の脛骨付着部で剥離骨折を伴うこともあります。

 

 

治療法

後十字靱帯損傷は前十字靱帯損傷に比べ、日常生活への影響がそれほど大きくないこともあり、ほとんどの場合は保存的治療が行われます。

 

 保存的治療では、装具やギプスなどの固定と、その後の筋力訓練と関節可動域訓練などのリハビリ治療を行い、経過を観察します。保存的治療が基本となります。

 受傷後すぐには応急処置の基本であるRICE処置(Rest安静・Ice冷却・Compression圧迫・Elevation挙上)を施します。

   膝の不安定さに対してはサポーターかギプスを装着して固定し、しばらくは足に負担をかけないように歩くようにします。又松葉杖も必要な場合があります。

 痛みが治まってきたら、膝周りの筋力をつけて、ひざの不安定さを筋力で補う様に筋力増強訓練を開始します。

靭帯の損傷が軽度で完全断裂でなければ数週間ほどで軽い運動までは復帰することも出来ます。損傷の規模にもよりますが、通常はおよそ2ヶ月ほどで完治を目指せます。

 

 靭帯が完全に断裂してしまった状態では自然治癒は難しくなってきます。

特に若い人や筋肉を使う労働者、スポ-ツをすることを望む人には、手術によって体の他の部位の靭帯か人工靭帯を移植する靭帯再建術が検討されます。

手術自体は数時間で終わるものですが、手術した後は相当の期間のリハビリを回復するのにかかります。膝の周囲の筋、大腿四頭筋やハムストリングの強化、筋力増強訓練、ROM訓練などを要します。

 

手術を施した場合は、およそ半年から場合によっては1年近くリハビリを行っていく必要があることを覚悟しなければなりません。