「半月板損傷」の画像検索結果膝の関節(脛骨部)を上から見た形

膝半月板損傷

半月板とは、大腿骨と脛骨からなる膝関節にある、三日月様の形をした軟骨の板です。膝内部の内側(内側半月板)と外側(外側半月板)に1枚ずつあり内側にあるものを内側半月板、外側にあるものを外側半月板と呼びます(図参照)。半月板は三日月状をしており弾力性に富んだ線維軟骨でできており、曲げ伸ばしなどの動きをスムーズにできるよう、膝関節を安定させる役割や、膝関節の衝撃を和らげるクッションの役割を果たしています。その成分は70%以上が水分で、残りはコラーゲンから主に構成されています。辺縁部30%を除いては血行に乏しく、一度損傷されるとくっつきにくい組織です。

 

 

 この半月板に亀裂が入ったり断裂するのが、半月板損傷です。膝をひねったときに起こりやすいですが、主には膝が曲がっている状態でひねりが加わった際に起こります。スポーツ中(サッカー、スキー、ラグビー、柔道など)の怪我で発症することが多いです。たとえば、バスケットやバレーでジャンプの着地時に膝をひねったとき、サッカーで脚を曲げたまま強くひねるインサイドキックをしたとき、ラグビーで膝に横からタックルされたときなどに多くみられます。くり返しひねりの力が加わる水泳の平泳ぎや、徐々に半月板が摩耗していくランニングなどで起こることもあります。 

 半月板に含まれる水分は加齢とともに減少し、そのクッション性は低下してゆきます。そのため、高齢者では長年使用してきた半月板が擦り切れて膝の痛みの原因となることがあります。高齢者の半月板障害は多くの場合変形性膝関節症の一部分症と考えられます。また、40歳以上になると日常生活のちょっとした動作でも損傷しやすくなります。

 


         

受傷機転によっては十字靭帯損傷や内側靭帯と半月板損傷が合併することもあります。また、靭帯が断裂することで、それにともない半月板が損傷してしまうケースや、以前に十字靭帯損傷を経験したことで膝の不安定感が続き、これにより半月板が損傷するケースもあります。なお、損傷しやすいのは内側半月板で、外側半月板に比べて5倍も多いとされます。

 

症状

半月板が損傷すると、その度合いによって以下のような症状が現れます。

膝関節の痛み、腫脹、引っかかり感、膝が動かない、などの症状がみられます。特に膝を深く曲げると膝関節の痛みが出ることが多いです。損傷された半月板が膝関節の中で引っかかると、膝が動かなくなる症状(ロッキング)がみられます。

 

合併症

半月板を単独で損傷するよりもむしろ、前十字靱帯や内側側副靱帯の損傷を併発しやすく(約6割)、関節軟骨の損傷を伴うこともあり、注意を要します。また逆に、前十字靱帯単独損傷の後遺症で膝に緩みが生じ、それが誘因となって半月板を損傷するケースも多く見られます。


急性の症状

  • 膝に水がたまる(淡い血性のことが多い)
  • ひねった際に、ボキッと音がする。。これは半月板が骨にひっかかっておきます。
  • 膝に体重をかけたり曲げ伸ばしすると、膝の中で挟まったような痛みを感じる。
  • 断裂した半月板の断片が関節内に挟まった場合にひざが動かしにくくなりこれをロッキング症状といいますがこれにともない、激痛や可動域制限が生じる(歩けなくなることも)。

 

 

慢性の症状

・階段を下りる際にがくんと膝おれがする、ひざの引っ掛かりや筋肉の萎縮により出ます。

・関節炎が起こり、関節内に水(関節液)が溜まって腫れる。

・長期化すると大腿四頭筋(膝の上の筋肉)が細くなります。

・重症化する(半月板がめくれる)と、関節軟骨がすり減り将来的に変形性膝関節症となることもあります。

 

診断

 問診(膝を痛めたきっかけ、症状の経過など)や臨床症状(疼痛誘発検査、関節水腫など)を元に診断してゆきます。レントゲンで骨の損傷を確認するために撮影します。

MRIという精密検査によって半月板の状態を直接調べることができます。現在の医療ではMRIが半月板損傷の診断に最も有用であるといえます。MRIにて損傷が疑われた場合、確定診断と治療をかねて関節鏡検査が行われます。

 

治療

 保存療法として膝周囲の筋力訓練(特に大腿四頭筋の筋力訓練)が有用です。症状が強い場合(強い痛みがある、嵌頓症状や関節水腫を繰り返す)に対しては、漫然と保存療法を繰り返してゆくと、引っかかった半月板により関節軟骨の損傷や膝関節拘縮を引き起こすことがあるため、手術を検討してゆきます。
         

 

治療

まずは、保存療法で症状の改善を図ります。

半月板には神経がないため、損傷しても痛みを感じることがないこともあります。ある報告では、60歳以上で特に自覚症状がない人の約40%に半月板損傷が認められたとされています。膝痛は、半月板の損傷により周辺組織(腱や筋肉)に影響が出た場合に起こります。

保存療法では、影響を受けている周辺組織の症状を和らげるため、主に以下のような治療を行います。

・急性期の症状が治まるまでテーピングやサポーターなどの装具で膝に負担がかからないようにし、安静にする。

・痛み、炎症に対しては、消炎鎮痛剤(内服薬)や、湿布・軟膏などの外用薬を使用する。場合によっては、関節内に直接ステロイド剤を注射します。また炎症を抑えるとともに、関節の動きをスムーズにする効果も見込めるヒアルロン酸注射を行うこともあります。

・大量に水(関節液)が溜まっている場合は、注射器で吸引する。

・膝を動かさないことによる筋萎縮(筋肉がやせること)や、膝をかばうことで起こる周辺組織の痛みを軽減するために、電気療法などを行うこともあります。

 

 

保存療法で症状が改善しない、ロッキングによって歩行が困難である、半月板損傷をくり返して症状が慢性化しているといった場合には、手術療法が必要となります。

 手術療法としては以前は半月板全切除術が行われていましたが、半月板を切除することで将来的な変形性膝関節症のリスクが高まることが分かってきたため、現在ではできるかぎり半月板を温存する半月板部分切除術が主に行われています。手術の方法には、損傷した部分を切り取る切除術と、損傷した部分を縫い合わせる縫合術があります。

 どちらも関節視鏡下で行われることが多いため、傷跡が小さく、患部への負担も最小限ですみます。まず、関節鏡にて半月板の損傷の程度を確認し、縫合できる状態であれば半月板縫合術を行います。半月板の縫合できない場合には、傷んだ部分のみを切除する部分切除術を行います。

 

1、半月板切除術の場合

手術では、たとえばロッキングを起こしている部分を極力小さ目に切除して、健常な部分はできるだけ温存するというように、症状を起こしている部分のみ治療することがほとんどです。

しかし切除したら完全によくなるとは限りません。なぜなら切除したところの関節軟骨へのストレスが大きくなるからです。症状が重い場合は将来関節軟骨の変性が進行し、変形性関節症になることがあります。

  • 術後翌日から歩行可能となり入院は最短で 術前・手術・術後2日目退院となります。
  • 1~2ヶ月水腫が貯まる事があります。
  • リハビリは積極的に行い、ひざのROM訓練や大腿4頭訓練筋訓練をします。膝の屈伸は術後から行ないます。
  • スポーツ・運動の復帰は、1~2ヶ月からを目安にします。
左:正常な半月板 中央:陥頓した半月板 右:部分切除後

左:正常な半月板 中央:陥頓した半月板 右:部分切除後 

 正常        断裂した半月板  断裂した半月板を切除

ただし、半月板の場合は手術をしたからといって100%治るとは限りません。それは、半月板の内側2/3には血液の供給がないため、縫合しても半月板同士がくっついて治ることが難しいからです。ただし、外側縁(全体の外1/3)の部分は血行がよいため、損傷がこの部分であれば縫合することで治る可能性が高くなります。切除術を行った場合は、切除した部分は再生されません。

 

2、半月板縫合術の場合

 半月板損傷が、辺縁の血流のよいところの場合、縫合が可能です。断裂部が癒合すればもとの半月板と同様な機能が期待できます。

  • 半月板が癒合するのは約6週間はかかると思われますので術後2週間は、荷重を避ける必要があります。
  • 膝の動きを制限するため装具やギプスをまくことがあります。その間は入院が必要な場合があります。
  • ROM訓練は2週後よりはじめ90度が3週目120度が4週目の目標です。
  • スポーツ・運動復帰は、3ヶ月から

 

 

 

手術の合併症

術後の疼痛・腫脹
術後一時的な痛み、腫れ、しびれなどが出ますが、いずれも3週間程度で治まってきます。              
術後知覚障害
術後に創部の周囲の感覚が低下することがあります。末梢神経の障害なので徐々に回復してきます。 
細菌感染
手術した傷が化膿し関節に膿がたまることがあります。半月板手術は手術中も水で関節を洗いながら行うので、感染を生じるリスクは低く1%以下です。
術後骨壊死
頻度は少ないですが、半月板部分を切除することで膝関節のバランス・クッション性が低下し、術後に骨壊死(骨が部分的に死んでしまう)が生じることがあります。通常は松葉杖を使用する期間を延長し、膝関節の負荷を減らして治療します。

あとは、周辺筋肉を強化して膝の負担を軽くする運動療法や、膝に負担をかけない動作の指導などにより、損傷を起こした部分と上手に付き合っていくようにします。

早い段階で適切に治療すれば、慢性化による半月板損傷のくり返しや、変形性膝関節症への移行を避けることもできるので、早めに整形外科を受診しましょう。