腰部変形性脊椎症・腰椎症(腰部脊椎症)

腰椎の骨や椎間板などに加齢的な変形などが起こって、慢性的に腰が痛い腰椎症(変形性腰椎症・腰部椎間板症)などは、中高年の腰痛の主な原因です。老化は誰にでも起こりますが、誰もに症状が出るとは限りません。症状がつらい場合は治療も必要になります。椎間板や椎間関節の狭小化,骨棘形成などのⅩ線所見が重要です

 

概要

年をとると脊柱の椎骨や椎間板にさまざまな変性や変形が生じてきます。これを腰部変形性脊椎症といいます。腰部脊椎症は、性別には関係なく、早ければ30歳代から発症し、年齢が高くなるにつれて発症しやすくなります。発症率は50歳代でピークとなり、60歳代以降はそれが続きます。
  1. 椎間板変性に陥ると椎間板間隙は狭くなり、同時に椎間関節のかみ合いを狂わせる
  2. (上)ときに椎間板ヘルニアが起こる
  3. (下)ときに脊椎すべりが起こる
  4. 変性が進むと椎骨の所々に骨棘が形成され、椎間関節も塊状に変形肥大する。これは脊柱を安定化させるための適応である➡その結果、脊柱管は狭くなる=変性腰部脊柱管狭窄症である
骨や椎間板の老化は、脊柱のどの部分でも起こりますが、症状が現れやすいのは腰部です。腰部は特に負担が大きいため、椎骨や椎間板が障害されやすいのです。
 こうした老化や長年に及ぶ負荷で、最も変化が起こりやすいのが椎間板です。椎間板は中心に水分を含んだゼリー状の「髄核」があり、周囲は「線維輪」という丈夫な組織でできています。その役割は、椎骨と椎骨の間にあって背骨の動きを助けたり、骨に加わる衝撃を吸収するクッションの働きをすることです。
 加齢によって椎間板の水分が徐々に失われて変性してくると、カが加わることによって椎間板がつぶれたり、変形します。
  変性が軽い状態を、「腰部椎間板症」ということもあります。スポーツや肉体労働を続けてきた人には、比較的早期から起こります。
 椎間板がつぶれることで椎骨の後方にある、椎間関節に負担が増し、関節の接触面が摩耗してきます。
  関節面の摩耗が起きると、その部分を補うために骨組織の生成が活発になり、それまではなかった骨の出っ張りができます。これを「骨棘」といい脊柱管のかに飛び出てくることで脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されるようになります。これが脊柱管狭窄症で前方の椎間板の圧迫と、後方の椎間関節、黄色靭帯より圧迫が来て、馬尾神経が圧迫を受けることにより足のしびれや痛みを生じます。
 
 そのほか、老化によって椎間板や椎間関節にゆるみが生じると、椎骨を支えきれずにすべってしまう
すべり症と呼ばれる状態になることもあります。
腰部変形性脊椎症の症状

 

動作を始めるときに痛みが強く出るのが特徴

椎間板や椎骨の老化現象によって、何らかの症状が引き起こされているのが腰部変形性脊椎症です。症状には、次のようなものがあります。

1慢性腰痛
 腰部脊椎症で現れる最も代表的な症状が「腰痛」です。慢性再発性の場合と、持続性の場合とがあります。
 起床時に動き出すときや座っていた状態から立ち上がるときなど、動作の開始時に痛みが強く現れ、動いているうちに軽くなるのが特徴です。


2腰椎運動制限 

 腰痛があることによって、結果的に「腰椎の可動域制限」が起こります。加齢とともに腰椎の可動域(動かせる範囲)が狭くなるのは当然で、生理的な現象ですが、腰部脊椎症の場合には、痛みがあるために〝これ以上動かせない″という状態が起きてきます。

 

 もともと脊柱管が狭い人は、脊柱管に老化による変化が起こることで、「下肢の痛み、しびれ、運動障害(筋力低下)」などを伴うことがあります。こうなると腰部脊柱管狭窄といえます。
 

3脊柱変形
 椎間板が左右非対称に変形することで、「脊柱側弯」が起きることがあります。また、椎骨が変形することで、本来は軽く前弯している腰椎に、後弯(後方凸の弯曲)が起きたりします。腰が曲がった状態です
 ただし、これらは加齢に伴う自然な変化で、たとえ腰が曲がっていても、それによって痛みなどが必ず起きるとは限りません。

高齢者で腰を曲げて手押し車を押して歩いている人を多く見かけますが、前述した加齢が原因で起こる腰痛が、こうした高齢者達の姿勢に大きく影響しているのです。 

 

年齢が若いと、痛みを避けた姿勢をしていても回復が早いのですが、高齢者が痛みを軽減する姿勢を(おおくは後弯)続けることにより、椎間板や筋肉の柔軟性も失われているために、若い年齢層よりも姿勢が固定化されやすくなります。

診断

診断の際に重要なのは、どのような症状があるかということと、体にどんな変化や異常が見られるかという身体所見です。
 問診では、腰痛や下肢の痛み、しびれなど、どんな症状が現れていて、日常の動作で制限されて困っているかなどが重要な情報となります。

 

 また、身体所見では脊柱の可動域(動かせる範囲)や、どんなふうに動いたときに痛みやしびれが起こるかを調べたり、感覚や腱反射などの神経の検査を行います。さらに、筋肉の状態を調べるために触診も行われます。腰が痛い人は、おしりの筋肉が萎縮していることがあるからです。

 

 画像検査の目的は、患者さんが訴える症状と身体所見の裏付けのためであり、ほかの重大な病気を見逃さないためです。画像上の変性や変形が、症状や身体所見に一致する場合に「腰部変形性脊椎症」と診断されます。


 治療法

治療の基本となるのは、痛みを改善するための対症療法です。対症療法をしても、変性や変形が元どおりに治るわけではありません。しかし、高齢者の変形性腰椎症などでは老化が最大の要因なので、手術が必要となるようなケースはあまりありません。

 

薬物療法
 痛みなどの症状が強い場合医療機関での治療の中心となるのは薬物療法です。非ステロイド性消炎鎮痛薬や筋弛緩薬などで痛みを軽減させます。薬には内服薬や貼り薬、座薬、抗うつ剤、オピオイド。

 

コルセットを装着する装具療法

 

牽引療法、理学療法

 腰椎けん引、低周波、SSP療法、針治療、温熱療法
 

神経ブロック:注射による治療で、特に痛みが強いときに有効です。

痛みが起こっている神経の周囲に局所麻酔を注入する「硬膜外ブロック」や、神経根の周辺に直接局所麻酔を注射する「神経根ブロック」などの方法がある

       硬膜外ブロック、神経根ブロック

筋膜リリ-ス:筋膜リリ-スを参照してください

 

運動療法 腹筋や背筋を維持するために体操や運動を行う。

   腱や筋肉を伸ばすストレッチは関節の可動域を確保するためにも有効。毎日、あるいは定期的に行うとよい。痛みが強いときには行ってはいけない。
 
 家庭で自分でできることとしては、体操療法も重要です。腰を支えている背筋や腹筋の筋力を維持することは、痛みの予防や軽減につながります。あるいは痛みが強いときに治療を受けて痛みが楽になったり、患者さん本人が心地よく、効果を実感できるものなら行ってかまいません

腰痛の運動の仕方


 

 

腰痛体操は慢性の腰痛の方に有効です。

運動量も強度も体力にあわせて行ってください

運動後痛みが出るようならすこし運動量を減らしてください2-3か

1回5-10回。できればお風呂に入った後に毎日。最低でも2-3回

行ってください。

腰痛体操としてストレッチを行う場合の約束事があります。

★ 絶対に無理をして行わない。痛みがあるときにはやらない。

★ 反動をつけたり、無理に伸ばしたりしない。

★ ストレッチをすることで痛みがひどくなる場合、すぐに中止する。

★ 自分のペースで行い、毎日継続できるようにする。

★ 医師や専門家の意見に従う。

 

 

 


他の項でも紹介しているマッケンジ-法とジャックナイフストレッチの変則版です

 

「1回3秒!“これだけ体操”のやり方」

監修:整形外科医 松平 浩さん
東京大学医学部附属病院 准教授

  • 足を肩幅より、やや広めに開く
  • おしりに両手をあてる
  • 息を吐きながら、ゆっくり上体を反らす
  • 上体を反らしたまま、その姿勢を3秒ほど保つ
  • ※骨盤を前に押し込むイメージです
    【注意】腰からヒザにかけて、しびれが出る場合は中止してください
  • 体操のポイント

セルフチェックで分かる タイプ別腰痛体操 日経ヘルス

 

 

 以下の方法はこのブログの他の腰痛の項でも紹介している方法です。

 腰セルフチェックで腰痛のタイプを判断し、その対策として簡単にできます。

日経プラスワン2012年1月12日掲載