腰部椎間板ヘルニア

はじめは腰に強い痛みが走り、お尻から下肢へ坐骨神経痛も起こってきます。

  症状の経過腰椎椎間板ヘルニアのMRI像

           
腰痛には、肉体労働や運動をやった後、翌日から2日目あたりに出現する筋肉痛もあれば、前に屈んで、物を持ち上げようとした時に急にズキッと腰が痛みこれが持続する椎間板性の鋭い痛みもあります。
 筋肉や靭帯性の腰痛は通常は数日から1週間くらいの内に収まっていきます。
しかし、椎間板性の腰痛は持続する傾向を示し、朝方痛みが特に強かったり、車に乗るソと痛みがつよくなったりソファ座る姿勢が痛いようです。くしゃみによっても増強することもあります。
椎間板を痛めた症状
第1段階:変性して脆くなった椎間板組織がこれを支えている靱帯を一部破った時の痛みです。俗にぎっくり腰と言われるものです。靱帯の破れる程度で腰痛の程度や持続する期間が異なります。安静にしていると、通常は自然に消失します。
第2段階:二度、三度、ぎっくり腰を繰り返すと、靱帯の損傷が強くなります。靱帯には痛みを感じる神経が分布しているので、椎間板による圧迫が強くなる程、痛みが強くなります
第3段階:靱帯の損傷が進み、椎間板が脱出してきます。この時に椎間板が神経根や馬尾神経を圧迫すると腰痛のみではなく、今度は、臀部や大腿、下腿などに痛みやしびれ、筋力低下など起こします。これが本当の意味での椎間板ヘルニアと言えます。激痛でトイレまで移動さえできない人もいます。
 
 ぎっくり腰で椎間板をいためたことに始まり、再発を繰り返すうちに臀部や下肢への痛みやしびれが発現してくるというのが腰椎椎間板ヘルニアの一般的な進行の仕方です。

治療は腰椎椎間板ヘルニアの進行度や状態に基づいて行うことが必要になります。

 

 

 

 

腰椎椎間板ヘルニアの典型例

腰椎椎間板ヘルニアは急性腰痛症(ぎっくり腰)のようにして発症します。はじめは腰に強い痛みが走り、お尻から下肢へ坐骨神経痛も起こってきます。しかし、安静を2-3日していただき痛み止めやコルセット、神経ブロックなどで治療すると、1週間くらいですこし改善します。1ヶ月経過すると痛みは半分くらいになります。2−3ヶ月すると、痛みはほぼ完全に治ります。

 9割くらいの方のケースでは手術は必要なく、保存的治療(手術をしない治療)で治っていきます。

通常はこのように様子を見てから、必要な場合には手術に切り替えます。

 

※保存的な治療の期間であっても手術をする場合もある
もちろん1ヶ月以内でも緊急手術が必要なこともあります。具体的には膀胱直腸障害(尿や便が出づらくなる)や麻痺による筋力低下が出現したときです。

 

 朝腰が痛い

腰椎椎間板ヘルニアでは朝腰が痛いと起きたときに痛みを感じることが多くあります。これは寝ている場合の不良姿勢と、椎間板が寝ている間に水分を吸収することで膨張することで、神経の圧迫が強くなることに起因していると思われます。

咳で痛みが増強?

また咳をすると痛みがひどくなったりすることがあります。これは咳をしたり、いきんだりすると脊髄の内圧が上がって神経の圧迫が強くなるためです。

 

自分でできる予防

腰痛がひどい場合は、体を少しかがめた状態で寝る方が望ましいです。

横向きでひざを曲げて眠るか、仰向けでひざの下にクッションなどをあてて眠るようにしましょう。腰痛がひどいと、仰向けの状態から起き上がることもかなり難しくなります。起き上がりではまず布団の中で横向きになり、布団に手を添えて手の力で体を持ち上げるようにゆっくり起きてみましょう。こうすると、仰向けに起きるよりも大幅に腰への負担を減らすことができます。

治療法について

 腰椎椎間板ヘルニアでの保存療法の基本は安静と薬物療法です。

1安静

 痛みが強い間は、神経への刺激や炎症を抑えるために安静が第一です。体を激しく使う仕事や、腰に負担のかかる家事など日常生活上の動作、運動は行わないようにします。座っていてもつらい場合は、横になるなど、最も楽な姿勢をとるようにします。椎間板にかかる圧力は、横になっているときが最も低く、立っているときよりも座っているときのほうが高いといわれています。また、ものを持つとさらに圧力がかかり、特に前かがみになると圧力が増すため、中腰での作業は、極力控えることが大切です

2、薬物療法

 安静とともに薬を服用します。

薬は、痛みや患部の炎症を抑える非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)や筋肉の緊張を和らげる薬痛み止めはただの気休めだから飲みたくないという方がおられますが、処方する薬は消炎作用も持っていますのでヘルニアで腫れた神経の炎症を抑える意味があり、ただ痛みを抑えるだけではありません。また少しでも日常生活動作の向上をさせるためには有効です。

薬は、痛みや患部の炎症を抑える非ステロイド性消炎鎮(NSAIDs)や、緊張した筋肉をほぐして痛みをやわらげる筋弛緩剤などを使用します。内服薬が中心ですが、湿布薬や塗り薬、座薬などを使います。

 最近は、オピオイド鎮痛薬抹消性神経性障害疼痛改善剤(リリカ)と呼ばれる痛みを感じる経路をブロックさせる有効な薬も使えるようになりました。

 

3、神経ブロック、硬膜外ブロック
 薬でおさまらない場合や耐えられない疼痛では、神経ブロックを行います。

腰の痛い部分に、局所麻酔薬を注入するトリガーポイント注射も有効性が認められます。

 神経ブロックには、仙骨や腰部の硬膜外より炎症を鎮めるステロイド薬を注射する硬膜外ブロックと、圧迫されて痛みのもとになっている神経根に、直接注射をする神経根ブロックがあります。

 

4、コルセット

 腰部を支えるためにはコルセットや腰椎バンドなどをつけての装具療法を行います。

 

5、牽引療法、理学療法

 腰の椎間板の内圧を除圧する目的で腰を引きのばす牽引療法があります。この場合腰は屈曲した状態で牽引するのが正しい方法で、腰を伸ばしたまま牽引すると、かえって腰が反ってしまい逆効果になる場合もあります。

低周波マイクロ波を用いる電気療法などの物理療法は、筋肉の緊張をとったり神経の興奮を抑えたりする目的で行われます。sspという鍼治療のツボに電極を当てて治療する方法もあります。

 

 

  症状が激しい時期の安静は大切ですが、いつまでも動かずにいると腰や股関節周囲の筋肉が硬くなりまた筋力も落ちます。ある程度の発症直後の激しい痛みが落ち着いたら、ストレッチで筋肉を緩める運動療法を行います。

 

自分でできるストレッチ
 椎間板の圧力を弱めるための運動が有効です。

 仰向けに寝て、両膝を90度の角度に曲げて立てます。次に立てた両膝を横に片側へ倒していきましょう。倒した両膝を再び元の位置にゆっくり起こし、今度は反対側へ同じようにゆっくり倒します。

この動きを繰り返すことで、腰周りの筋肉がほぐれて動きが楽になります。

 

マッケンジ-法

  椎間板の圧力を少なくするためにはマッケンジ-法の進展のエクササイズをお勧めします。

立っている状態で徐々に腰をそる方法、

腹這いになった状態を維持した後、徐々に腰を伸ばす方向にエビぞりに腰を伸ばしてゆきます。

まずひじを立てた状態を行いこれができるようになれば今度は、手のひらついて腕を伸ばして、ちょうど腕立て伏せをするような動作をしていきます。

詳しくはマッケンジ-法についてこのホームペ-ジで紹介していますのでで述べておきいますので参考にしてください。

 

 

 

 

 

マッケンジ-法について

 ニュージーランドの理学療法士 ロビンA.マッケンジー氏 により考案された腰部の伸展をメインとするエクササイズで、従来までは腰痛にはむしろ禁忌とされていた腰を反る方向へ動かす体操で特に椎間板ヘルニアを含む腰痛の治療や姿勢不良や関節機能不全による慢性腰痛治療に効果を上げている運動療法(治療法)です。

 

 現代人の日常生活において、背中を丸める屈曲姿勢をとることが腰に正常な彎曲を伴う姿勢をとることに比べ非常に多くなっています。
 通常は伸展(反る)方向の可動制限が起こります。
  故に、伸展方向の可動制限とそれに伴う痛みは残ったままで、加えて屈曲状態が続いた腰部は、絶えず上体の重みを腰の筋肉で支えなければならない状態をまねき、慢性的な腰痛に発展させてしまいます。

 マッケンジーエクササイズは腰椎の伸展方向の可動性を回復させ、より負荷の少ない生理的な姿勢をとれるように訓練する運動療法です。

 

 

マッケンジー法による腰痛の病態分類と治療法

  1、Derangement syndrome(偏位症候群)
      椎間板や椎間関節の変性を原因とする症候群.
      治療は、椎間板や椎間関節の内圧を少なくする。
      エクササイズは、必ず痛みを緩和する方向への体操を行う.

  2、Dysfunction syndrome(機能障害症候群)
      軟部組織の短縮、拘縮を原因とする症候群.
      所謂、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)である、
      治療は、マッケンジー法とトリガーポイント法(筋膜リリ-ス)を行う。
    

  3、Postural syndrome(姿勢症候群)
      日常生活での不良姿勢を原因とする症候群.
      治療は、背骨のS字状への矯正と正しい姿勢の指導.
      エクササイズは、正しい姿勢を習得するための
         sluch-overcorrect法を行う.

  4、Others(上記3つに当てはまらない病態)
     

マッケンジー法のホームエクササイズ

 1、腹臥位で深呼吸     目安、2分間×7セット/日
 2、腹臥位で肘立て腰反らし 目安、2分間×7セット/日
 3、腹臥位で腕伸ばし腰反らし目安、10回×10セット/日
 4、立位で伸展運動     目安、7回×7セット/日
 5、仰臥位で屈曲運動    目安、5回×3セット/日
 6、座位で屈曲運動     目安、5回×3セット/日
 7、立位で屈曲運動     目安、5回×3セット/日
 8、踏み台で屈曲運動    目安、5回×3セット/日
  

マッケンジー法の実際

-------------------伸展のエクササイズ----------------------


 1、急性腰痛の場合はまずこの姿勢から行ないます。
うつ伏せになることで腰椎に少し彎曲が出来ます。
5分~10分間、この状態を保持します。

こちらはうつ伏せになることがまったく困難でない方や慢性腰痛の方は省いていただいて結構です。

又、この状態をとる事自体が痛みで不可能な場合は以下の運動には進まず、腹の下に座布団やクッションを重ねて入れて、徐々にクッションをとってうつ伏せが出来るようになる事を目指します。
「マッケンジ-法」の画像検索結果
    
2、次に、肘を床につけて、さらに上体をそらし約5分この状態を保持します。

 
 
 
3、さらに腕立て伏せのような反復伸展運動を行います。
 
背筋を使わず、リラックスした状態で腕の力だけで行うことです。

腕を伸ばした後、息を吐き、おなかをしっかり落とすようにしましょう。

10回1セットで、最初の2、3回は注意して行ない、安全確認後続行して下さい。 そして、9回目10回目は肘を伸ばした状態で数秒間静止して下さい。
「マッケンジー法」の画像検索結果 

 マッケンジーエクササイズでは当初は2~3時間おきに行なうことを推奨しており、立った状態で手で腰を押し出すようにして腰を反らせる方法で代用します。症状の改善に伴い1日4セットに減らします。多くの機能不全による腰痛が1、2ヶ月で改善します。

 この運動を行う時、元からあったお尻や足の痛み・痺れが減少して、背骨上(身体の中央)に痛みが移行する事がありますがこれは “中央兆候” と言われ、回復に向かう良い兆候です。
 但し、この運動も痛みが増強する場合がありますからその場合は直ちに中止します。
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--------------屈曲のエクササイズ-------------

マッケンジーエクササイズでは伸展の運動だけでなく、下肢への症状が完全に治まったあと、可動性の少なくなった屈曲の動きを回復させるために屈曲のエクササイズも行います。


方法は仰向けに寝て膝を抱きかかえるようにして腰部を屈曲させます。その後痛みが出ない様になれば立位で行なってもかまいません。

また、症状が治まった後、前屈時に身体の傾きが出る方は傾く側の反対側の足を椅子などの台にのせ立って前屈します。
 
屈曲運動は損傷部位の回復が完了し、下肢症状がなくなってから行います。

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