小児期の股関節痛

 

 

 

 

単純性股関節炎

2~14歳の小児(男子にやや多い)で、急に股関節の痛みを訴えて歩行困難、びっこをひくなど症状が出ます。

診断するための基準:

①急性または亜急性の発症で、股関節痛があり、歩行不能または跛行を呈する。
②股関節の可動域制限がある。
③レントゲンで関節裂隙の開大以外の骨変化がない。
④超音波検査やMRIで、関節液の貯留を認める。
⑤約2週間で症状が軽快する。

えこ-やMRIで関節液貯留を認める。

治療:消炎鎮痛剤の投与をする。痛みがひどい場合は入院の上ベッド上安静目的で1~2kgのスピードトラック牽引をすることもある。通常2週間以内に症状は消失する。予後は良好です。

 

 

先天性股関節脱臼

 小児期には股関節痛を訴えることがほとんどなく、うちわ歩行や跛行に母親が気ずく程度ですが、成長とともに跛行・運動時痛、易疲労感が生じ、これらは安静により軽快するのが特徴です。

乳幼児の時の病歴地方種も 

レントゲン所見で、骨頭の外側偏位と臼蓋形成不全を認めます。
具体的には、
①Shenton線の連続性がなくなる。
②Sharp角は14才以上では正常で33~38度ですが、この角度が大きくなります。また臼蓋角も30度以上になります。
③骨頭の外側偏位がみることのできるCE角が20度以下となります。
④骨頭内縁涙痕外縁間距離が10mm以上になります。


両足で立っているときに正常股関節にかかる力は体重の約1/3といわれていますが、片脚起立の場合、体の平衡を保つため外転筋には体重の約2倍の力が働き、股関節には体重の約3倍の力が働くといわれています。骨頭が外側に偏位していると、体の中心からよけい離れることによる梃子の作用でもっと多くの力がかかるということになります。この外転筋力が低下するために疲労や跛行といった症状が出現します。

見逃されていた例にこのような症状がでてしまうのはわかりますが、先天性股関節脱臼の初期治療をしていたのに、初期治療で開排位保持による腸腰筋の短縮や中殿筋(股関節を外転させる)筋力低下など股関節周囲筋のバランス異常が生じるために、大腿骨頭が外方に移動します。この骨頭の求心性が不良で外側に偏位してると、その受け皿となる屋根の部分の臼蓋とよばれるところの発育も悪くなり、臼蓋形成不全を伴ってきます。臼蓋をつくる寛骨臼は骨頭からの適度な刺激をうけて発育していくものですが、長期間亜脱臼位にあると臼蓋上外縁は過度の圧迫により骨化が障害され、逆に臼底部では圧迫が少なくなるために骨化が進んでしまい浅く急峻な臼蓋となってしまうためです。これが臼蓋形成不全になるメカニズムです。

Trendelenburug徴候とDuchenne現象

股関節の外転筋力低下をチェックするには、患肢片脚起立させて、脚をついていない遊脚側の骨盤が沈下するかどうかをみます。骨盤が下がれば外転筋力低下があり、Trendelenburg徴候陽性といいます。1回だけでは、筋肉が頑張ってこの徴候がでないこともあるので、何回か行い、筋肉疲労させると、この徴候が出現することもよくあるので、1回だけで判断しないことです。
これと同じ原理で、患肢片脚起立で、遊脚側の骨盤が下がるのを防ぐために患者が立っている脚の側に上体を倒して、バランスをとろうとする現象をDuchenne現象といいます。

治療としては股関節外転筋力をあげるための股関節体操をしたり水泳を勧めたりしますが、非可逆的な軟骨の変性がおこる前までに股関節の求心位を獲得し、正常な股関節の発育が得られるように手術など検討する必要があります

 

 

 

 ペルテス病

3~12歳くらい(6~7歳が最も多い)の小児でびっこを引く。男子のほうが女子より5倍くらい多い。

股関節自体の痛みはほとんど訴えない。痛みを訴える場合は、同側の大腿の遠位部から膝関節前面に訴えることが多く注意を要する。

 

小児大腿骨近位骨端部の血行障害に起因しておこる骨端症のひとつである。多かれ少なかれ大腿骨頭に変形を生じ、その程度によっては将来的に変形性股関節症に移行する場合もある。

 

診断はレントゲン所見による。病早期では正面像ではっきりした所見が無く側面像にてのみ変化がみられる場合があり2方向撮影が必要である。病初期の滑膜炎期にはレントゲンでほとんど所見がなく単純性股関節症との鑑別が難しい。MRIが有用である。

ペルテス病の治療はいかに骨頭変形を少なくし将来的な股関節症を余郷するかにあり、まずは免荷装具をもちいる

 

 

大腿骨頭すべり症

10~16歳の思春期の太った男児に多い。股関節痛を訴えることが多いが、大腿痛や膝の痛みを訴える場合もある。性ホルモン成長ホルモン、副腎皮質ホルモンのバランスが崩れるために発症たするという説があるが

ホルモン異常を認めた例はあまりない。


 骨頭の成長軟骨帯での力学的結合が脆弱化して骨端と骨幹端間が離開し、さらにすべりが生ずるものです。

急性期は股関節痛を生じ慢性型では股関節痛は軽度で跛行が目立つことが多い。

 

検査

患肢では股関節を屈曲していくと外転外旋していくDrehmann兆候が特徴的な所見である。

単純X線では股関節は外旋位を取り、骨端線に不正を見、
治療として痛みのある急性のすべりには臥床牽引することもあるが手術をすることが多い。

 

   

 

化膿性股関節炎

痛みのため患肢をじっとして動かさず、一見麻痺してみえる。股関節は屈曲・外転・外旋位をとる。患側鼠径部を押すと激しく泣く。大腿近位から鼠径部付近の熱感、発赤。大腿骨近位部の皮膚のシワの非対称等 がみられる。
乳児期におこる急性の細菌性股関節炎で、おおくは大腿骨骨幹端に発生した化膿性骨髄炎が股関節に波及しておこる。
検査では発熱や白血球増多などの細菌感染症特有の全身症状が必ずしも明らかでないことが多いので注意を要する。
レントゲン検査では骨頭の外側偏位がみられることがある。
症状や検査より本性を疑う場合は、関節穿刺をおこなう

 

 

 

 

骨盤はく離骨折

13~17歳の男子スポーツ選手に多発する。剥離骨折は筋腱付着部のはどこにでもおこりうり、骨突起部はスポーツによる過大な筋張力や伸張などの負担にさらされ、かつ骨端線部位は骨端線閉鎖までは弱点で、発育期には骨の成長が筋の成長に追いつかずアンバランスを生じ骨突起部に負担がかかる。
●上前腸骨棘剥離骨折:
上前腸骨棘には縫工筋(屈筋、外転筋)、大腿筋膜張筋(外転筋)が付着し、疾走中や動作の切り替え時、加速時などに痛みがしょうじ剥離骨折をみとめる。
●下前腸骨棘剥離骨折:
下前腸骨棘には大腿直筋が付着する。ダッシュやサッカーのキック動作ハードルの着地時などで股関節の伸展された状態で大腿直筋が急激に収縮、伸張したときに痛みが生じる
治療は冷却とまずスポーツを禁止し、約4週間の安静をする。スポーツの復帰は2~3ヶ月が目途となる。

 

 大腿骨頭壊死症