側彎症

そくわんしょう

概要

脊椎は7個の頚椎(首の部分の背骨)、12個の胸椎(胸の部分の背骨)、そして5個の腰椎(腰の部分の背骨)から構成されます。正常な状態ではこの脊椎の形は正面から見ると真っ直ぐですが、側弯症とは正面から見た時に左右に曲がっている状態(側弯)、さらに椎体のねじれ(回旋)が伴う状態です。

側弯症は前方から見て脊椎がコブ角で10度以上曲がる病態です

発生頻度(特発性側弯症の場合):装具治療の対象となる20-30度度以上の側弯症は0.3~0.5%

                すなわち2-300人に一人

                手術が必要な可能性が出てくる40度以上の側弯は千人に一人

側弯症の合併症

側弯症では脊柱が横(側方)に曲がり、多くの場合脊柱自体のねじれを伴います。

側弯症が進行すると側弯変形による心理的ストレスの原因や腰痛や背部痛、肺活量の低下などの呼吸機能障害、まれに神経障害を伴うことがあります。

原因

側弯症は、機能性側弯症と構築性側弯症の二つに分類されます。

 

 

機能性側弯とは背骨自体に原因はなく、背骨以外の原因を除去することにより軽減できる側弯症。例えば、習慣的に姿勢が不良であったり、腰部椎間板ヘルニアなどの痛みによるもの、骨盤の傾きによるものが含まれます。疼痛、姿勢、下肢長差などの原因による一時的な側弯状態で、弯曲は軽度で捻れを伴わず、その原因を取り除くことにより側弯は消失します。

 

構築性側弯症の原因にも様々なものがあります。

その中で一番頻度の高いものは特発性側弯症です。特発性とは原因不明という意味です。思春期特発性側弯症(患者の約30%に脊柱側弯症の家族歴があります。

そのほか、脊髄などの神経組織の異常を原因とした側弯症(神経原性側弯)、筋肉の病気を原因とした側弯症(筋原性側弯症)、椎体の変形による側弯(先天性側弯)、そのほかマルファン症候群などの結合組織の異常に伴った側弯症など、様々な側弯症の原因が分かっております。

 

脊柱カーブの測定の仕方

脊柱側弯症ではカーブの大きさをコブ角という角度で表します。目的とするカーブの椎体が一番傾いている椎体と椎体の間の角度を測定します

 

症状

側弯症の身体特長を示します
脊柱が曲がってくるため、以下のような体表面の変化が生じる場合があります。

  1. 肩の高さが非対称
  2. 腰のくびれが非対称
  3. 体幹バランス不良
  4. 骨盤の傾き
  5. 肩甲骨部の出っ張り

などが特徴的です。しかし、一番特徴的なのは、ハンプです(図4)。体を前にかがめた時、背中、または腰の部分が盛り上がってきます。これをハンプと呼びます。一般にはこのハンプの大きさは側弯のカーブが重度になっていくほど大きく目立ってくるようになります。

 

診断

側弯症を正確に診断するためには、最終的には医師によるX線(レントゲン)検査が必要です。
しかし、医師でなくても、注意すれば簡単な方法で側弯症を疑うことができます。 日常生活のなかで、お母さんが一緒に入浴しながらせなかを流して気づくとか、洋服を新調するときに両肩やせなかがきちんと合わないとか、スカートの丈が左右で違っていることからも気づくこともあります。
また、立位検査や前屈検査で体型が左右非対称であることからみつけることができます。

立位検査

後ろ向きにまっすぐ立った、気をつけの姿勢で行います。

①肩の高さに左右差があるかどうか。
②肩甲骨の高さと突出の程度に左右差があるかどうか。
③ウエストライン(腰の脇線)が左右非対称であるかどうか。

前屈検査

両方の手のひらを合わせ、肩の力を抜いて両腕を自然に垂らし、膝を伸ばしたままでゆっくりおじぎをさせます。肋骨や腰に左右のいずれかにもりあがりがあり、左右の高さに差があるかどうか。
側弯症が疑われたら、立位での脊柱のレントゲン検査が必要となります。
レントゲン検査の結果で機能性側弯や治療を必要としない程度の構築性側弯症と診断されても、それが進行するかどうか十分注意し、経過観察する必要があります。

立位検査と前屈検査:日本側弯症学会編集、側弯のしおり『知っておきたい脊柱側弯症』より引用     

予防と治療

治療は、側弯の角度(コブ角)と年齢骨成熟度によって決められます。

治療法には、専門医による定期的な経過観察、装具療法、手術療法があります。
運動療法、マッサージやカイロプラクテイスは矯正効果がなく、その有効性は科学的に確認されていません。

  *側弯症の運動療法(体操など)
  体操は装具治療によって弱った筋肉を鍛えるために必要です。しかし、体操をすることによって側弯症が改善したり、または進行が予防されたという医学的な証拠はありません。

また、カイロや整体などの徒手矯正法は、さまざまな方法が試みられていますが、残念ながら側弯症の治療に成功したという医学的な証拠はありません。                         

装具を長期間つけると、体の筋力低下をきたしそのため装具を徐々にはずしていくときに筋力強化を行います。

体が硬い場合、弯曲の凹側のストレッチを行います。

 

 

① 経過観察

成長期で、側弯が20°~25°以下の軽い側弯に対し、進行するかどうか判定できないために3~6ヵ月ごとの専門医による定期的な診察を受けることが大切です。

ただし、25度以上の大きさであっても、年齢が15~16歳以上で骨の成長が止まってきている場合にも定期的な通院だけで様子を見る場合があります。

② 装具治療

側弯が25°~35°までの軽症あるいは中等度の側弯症に対し、側弯の進行防止、矯正およびその保持のために装具療法が行われます。

目的

側弯の進行防止であり、弯曲した脊柱をまっすぐな正常に戻すことではありません。

装具で側弯を矯正しながら成長させ、手術に至らせないことであり、骨成熟が終了したら装具を除去します。

 手術までの待機期間に装具療法が行われることもあります。

 

骨成熟前(骨が大人の骨になる前、だいたい14-15歳以下)でコブ角が25度の場合に開始します。装具は、基本的に一日中着用します(お風呂と体育以外)。装具治療開始後は3-4ヶ月毎にレントゲンを撮り、カーブの進行の具合を確認します。

装具の種類

1胸椎、腰椎の変形を治療する装具(TLSO装具)

「側弯症 装具」の画像検索結果

2頚椎、胸椎、腰椎を治療する装具(CTLSO装具)です。

「側弯症 装具」の画像検索結果

3大阪医科大学式側弯矯正装具(OMC装具)

この装具は、昼間と夜間(23時間)装着する装具です
            
             側弯症の装具は、十分な経験のある義肢装具士と 相談しながら作成する必要があります。

 

骨成熟終了時に側弯が30°~35°以下であれば成人後もとくに問題ありませんが、

35°以上であると年齢とともに進行し、将来手術になることもあります。

 

 

 

10~12歳:コブ角30度以上の側弯は90%の確率で、コブ角60度以上の側弯の場合は100%の確率で進行するといわれています。このような側弯を放置しておくと、重度の側弯症(80度以上)に進行してしまいます。手術の目的は、その進行を止めることです。脊柱の変形によって肺が圧迫されたり心臓が圧迫されたりして労作時などに息切れを自覚するようになります。もちろん姿勢が悪いことによって腰痛や背部痛の発生率も増加します。

14-15歳以下:コブ角が25度以上:装具を開始します

 

骨の成長終了後(18-20歳以上):コブ角が40度を超えた側弯症は年間0.5~1度程度の進行があるといわれております。

 成長終了後の側弯症では、今後の側弯の進行の可能性と手術の危険性などを主治医と相談して、手術を受けるかどうか決めたほうが良いと思われます。見た目が悪いことで心理的負担のある場合整容目的も手術の理由となることがあります。

 

手術療法

手術をする場合、最も重要な理由は、カーブの進行予防です。

  1. 手術方法には大きく分けて前方法と後方法の二つに分けられます。矯正するカーブの場所により方法を使い分けます。後方法は胸椎カーブ、胸腰椎カーブに適応されます。前方法は胸腰椎カーブ、腰椎カーブに適応されます。腰椎カーブには近年では椎弓根スクリュー(後述)の普及で矯正力が向上してきたため、後方法の適応が増えています。前方法・後方法の合併もあります。カーブが極めて大きい場合、若年者で今後の大きな身長の伸びが見込まれる場合です。
  2. 手術の方法
    1. 前方法:前方法は背骨の前方、すなわち椎体や椎間板を実際に触って矯正する方法です。麻酔をかけた後、手術台の上で横向きに寝ていただきます。そして、肋骨に沿って皮切を入れて、肋骨を1~2本外して背骨にアプローチします。そして、矯正予定の範囲の椎間板を切除し、そこに外した肋骨を移植して、椎体にスクリューを1~2本入れてロッドで矯正を行います。
    2. 後方法(図5):背中に縦の皮切を加えて、背骨から筋肉を剥がして棘突起、椎弓、横突起といった背骨の後方組織を露出します。矯正に使用する道具は主に椎弓根スクリューとロッドを使用します。時によってはフックやワイヤーも使用します。椎弓根にスクリューを設置し、そこにロッドを連結させて様々なテクニックを用いてカーブを矯正していきます。矯正を行った後は骨移植という作業を行います。スクリューとロッドでしばらくの間矯正位は保持できますが、その内、金属疲労でスクリューやロッドが折れたり、スクリューが緩んだりします。そのため、矯正した範囲の背骨を一つの骨にくっつけてしまう作業が必要になってきます。使用する骨は大抵の場合は右の腸骨(骨盤の骨)から採取します。