線維筋痛症せんいきんつうしょ

 

概要

全身の広い範囲にわたって痛みを感じる病気です。
しかし一般の検査では目立った異常はみつけられないのが特徴です。命に関わる病気ではありませんが、痛みのために日常生活や社会生活に支障が出るほどになることもあります。

 この病気の主な状は、体の広範な部位に起こる激しい慢性の疼痛とうつうと「こわばり」ですが、その他に激しい疲労、頭痛、落ち込んだ(抑うつ)気分、不眠など多彩な自覚症状を伴います。

 

 

 診察では、体のいろいろな場所を押さえると強く痛むところがありますが。しかしレントゲンやMRIなど検査で明らかな異常のない原因不明で難治性の病気です。日本では人口の約2%にみられ、約200万人が罹患しているとされており、女性に多く年齢30~50代と中年女性に発症することが多くなっていますが、若い世代の発症もあり最近では小児の患者もみつかっています

 慢性疲労症候群の合併が約3分の1あるといわれています。



原因

 原因は残念ながら現在のところ不明ですが、痛みの原因は神経障害性疼痛のひとつとされ、痛みを伝える神経が異常に活動し、わずかな刺激で痛みを過剰に感じる痛みの神経の過敏(感作)状態によるとされています。

 手術、けが、強い身体的・精神的ストレスなどが発病のきっかけとなり、また日常生活の大きな出来事が病気の経過に影響を与えます。


症状の現れ方

首~肩、背中や腰部、臀部などの体幹部や、太ももや膝、下肢などの痛みやしびれ・こわばり感、また眼の奥や口腔の痛み、頭痛などまで、様々な痛みの症状があります

 体のある部位に思い当たる原因もなく、しつこい痛みから始まり、やがてその痛みが体のあちらこちらに広がると同時に、激しい疲労感、落ち込んだ気分、不安感、口や目の渇き、頭痛・頭重感や不眠、めまい、下痢や便秘、しびれ、関節痛、全身のこわばりなど多彩な症状を伴って、病気として典型的となります。また、他の病気(リウマチなど)に付随して起こってくることもあります。また、気候や過労・ストレスなどで痛みの度合が強くなったり、レベルが変化したりすることもあります。

1.検査では異常が出ない「原因不明の痛み」が特徴
原因は不明であり、通常の医師が行なう血液検査では異常が現れません。CTスキャンやMRIの検査しても異常がなく、この病気が診断できる特別な検査は今の所なく、治療法も確立されていません。
症状は、全身の耐え難い恒常的な痛み(慢性的、持続的に休みなく続く広範囲の激しい疼痛)を主な症状として、全身の重度の疲労や種々の症状をともなう疾患です。症状が進行すると、わずかな刺激(爪や髪への刺激、服のこすれ、音、光、温度・湿度の変化など)で激痛がはしり日常生活が著しく困難になります。
まだあまり名前の知られていない病気のため理解されないことも多いです。また検査で異常は見られないことから、「詐病」や「怠け病」などと思われることも少なくありません。生命に関わる病気ではありませんが、痛みのために日常生活や社会生活に支障をきたすことも少なくありません
2.まだまだ認知度の低い病気
欧米では1900年代初め頃から注目されてお、日本でも30年程前にこの病気の記述があります。以前は「結合織炎」「結合織炎症候群」と呼ばれていたものが今は「線維筋痛症(線維筋痛症候群)」と改められました。
日本ではようやく最近名前が知られてきたところで、まだまだ一般向け書籍等も少なく情報を得にくい病気です。医療関係者にも認知度が低く、なかなか診断がつかなかったり、ヒステリーや気のせいで片付けられてしまうことも多いようです。ストレスでパニック障害を起こす事もあり、患者はたらい回しにされ、仮面うつ病・更年期障害・自律神経失調症・身体表現性障害など単なる不定愁訴と誤診される場合も多い。痛みのため寝たきりになり働くことができず失職したり、経済的に困窮して日常生活が送れなくなる患者も少なくありません。
日本では人口の約1.7%、200万人以上と非常に多くの潜在患者が存在するといわれています。
最近は医療関係者の間でも関心がもたれ、少しずつですが治療や研究が進められているところです。現時点ではまだ不明な点が多い病気であり、治療法の確立が待たれています。

 

(2)線維筋痛症の症状

 

1.全身の慢性的な激しい痛み
全身や身体の広範囲に痛みを感じます。痛みの箇所や強さは人により異なります。痛みの種類は普通の人が日常経験する痛みと異なり、耐え難いもので「電気が走るような痛み」や「ガラスの破片が流れるような痛み」などと表現されます。普通なら痛みを感じない程の刺激に対して痛みを感じることもあります。痛い箇所は移動したりすることもあります。
症状には個人差があり、軽度なら仕事を続けられる場合もありますが、重度の場合はガンの末期患者と同レベルの疼痛といわれており、日常生活に支障をきたし自力で生活できない場合もあります。症状が重くなると髪やつめに触っただけで痛みが走り、意識がもうろうとなり寝たきりになったり、通常の日常生活(食事・買い物・入浴・着替え・歩行・寝返り等)、呼吸や嚥下すら困難になる場合もあります。
2.付随する症状
からだの痛み以外にも様々な症状を伴うことがあります。付随する症状としては、こわばりやうずき、痺れ、振戦と震え、全身倦怠感と疲労感、耳鳴り、視力の変化、頭痛、微熱、体温調節の失調、睡眠障害、不眠と過眠、歯や歯茎、顎の痛み、口内炎、顎関節症候群、眼の奥の痛み、頻尿、寝汗、動悸息切れ、発疹、低血糖症、月経前症候群、過敏性腸症候群、三叉神経痛など様々です。

 

(3)診断

 

2010年現在明確な診断基準はなく、現段階では1990年に米国リウマチ学会(ACR)が作成した分類基準を用いて診断されることが多いそうです。
◎広範囲に及ぶ痛みが3ヶ月以上続いている
◎全身にある18箇所の圧痛点(ツボのようなもの)を4kgfの力で押したときに11箇所以上痛い
ただし、11箇所以上でなくても専門医の判断で線維筋痛症と診断されることもあります。
ただし、症状が他の病気によるものでないことが条件です。



検査と診断

 通常の血液や尿検査、脳波、心電図、X線検査、あるいはCT、MR画像などで明らかな異常がない、そのことがこの病気の診断の難しさにつながります。診断は一般的検査に異常がないことが前提となり、アメリカリウマチ学会の1990年の診断基準が世界的に用いられ、日本人に用いても正確な診断ができます。

 すなわち、(1)体の広範な部位の原因不明の激しい痛みが3カ月以上持続ないし再発性にみられることと、(2)診察ではあらかじめ決められた体の特定の部位(18カ所)を親指で4kgの強さで圧迫されると、線維筋痛症患者さんでは11カ所以上に痛みを訴える(圧痛点の存在)こと、の2点が認められれば、線維筋痛症と確実に診断されます。


治療の方法

 治療で重要なことは、確実な診断と病気を理解し、受け入れることです。欧米ではこの病気は古くから知られており、さまざまな薬物療法と非薬物療法が行われてきました。

 根拠に基づく医療(EBM)の観点から、薬物療法では各種抗うつ薬と新型抗てんかん薬(抗けいれん薬)が確実な効果が得られます。これら薬剤は、うつ病、てんかん、治療を期待するものでなく、神経障害性疼痛に有効だからです。

 その他に抗不安薬、睡眠調整薬も併用されますが、日本ではノイロトロピンが基礎薬物として用られます。しかし、通常の鎮痛薬(非ステロイド系抗炎症薬など)は無効で、麻薬などは限界があるとされています。

 非薬物療法では、精神療法としての認知行動療法と有酸素運動(エアロビック運動)が有効ですが、その他、鍼灸しんきゅう、ヨガ、気功、マッサージなどは確実に有効かどうかは見解は一定していません。


病気に気づいたらどうするか

 思い当たる原因がなく、体のあちらこちらに3カ月以上にわたる痛みとともに、疲労感、落ち込んだ気分など、痛み以外にさまざまな症状がみられた場合は、日本線維筋痛症学会線維筋痛症診療ネットワーク(http//jcfi.jp/)へ相談してください。

 日常生活上の注意は、できるだけ、体を動かすことですが、翌日に疲労が残るほどの強さは避けなければなりません。また、過度の安静はかえって病状を悪化させるとされています。■慢性疲労症候群
 



■検査
 
線維筋痛症については、今のところこの病気が診断できる検査はありません。血液、レントゲン、CT、MRIなどの検査を行っても、線維筋痛症と明確に診断できる検査はないのです。

リウマチや膠原病である可能性、あるいは併発している可能性もあるので、これらのリウマチ性疾患などの検査を行う必要があります。


■診断

1990年発表のアメリカリウマチ学会の診断基準を参考にして診断されることが多いそうです。

1.広範囲の疼痛の既往歴があるか
2.特定の圧痛点を手指で圧したときに、18ケ所の内11ケ所以上に痛みを感じるか(圧す強さは4kg)
※他に病気があっても線維筋痛症の診断は除外されません。

 
■何科に行けばいいの?

線維筋痛症の患者の診療数としてはリウマチ科がもっとも多いと思われますが、内科や整形外科、心療内科などの科でも診療しているところがあります。
 原因は今のところ未解明

原因はまだ解明されていません。神経・内分泌・免疫系の不調が考えられています。
・睡眠障害との関連
・痛みの抑制や痛みの情報を伝える神経伝達物質との関連
・脳の痛みの信号などに関わる部分の血流低下
などの研究がすすめられています。

QOL低下がある/2~3年で症状が改善されることも
線維筋痛症は命にかかわる病気ではなく、身体障害者になったりすることもありません。しかし、痛みによりQOL(Quality of Life=生活の質)が低下したり日常動作に不自由することがあり、中には社会生活に支障が出たり入院が必要になるケースもあります。

症状が重症化したり長引くこともありますが、数ヶ月~1、2年で症状が改善されることもあり様々です。軽症の場合などは2、3年で回復するケースも少なくないようです。


無理解な対応などで痛みが増すこともある

認知度の低い病気であることもあり、受診した医療機関で理解してもらえないなど、不安やストレスが増大することで痛みも増すとも言われています。
 

                      

                          小林整形外科宇部市  ホ-ムペ-ジ