背部の筋肉

 

 

 

マッケンジ-法について

 ニュージーランドの理学療法士 ロビンA.マッケンジー氏 により考案された腰部の伸展をメインとするエクササイズで、従来までは腰痛にはむしろ禁忌とされていた腰を反る方向へ動かす体操で、特に椎間板ヘルニアを含む腰痛の治療や姿勢不良や関節機能不全による慢性腰痛に効果を上げている運動療法(治療法)です。治療法は勝手に自分で判断しないで整形外科の医師に相談しましょう。

 

 現代人の日常生活において、背中を丸める屈曲姿勢をとることが腰に正常な彎曲を伴う姿勢をとることに比べ非常に多くなっています。
 通常は伸展(反る)方向の可動制限が起こります。
  故に、伸展方向の可動制限とそれに伴う痛みは残ったままで、加えて屈曲状態が続いた腰部は、絶えず上体の重みを腰の筋肉で支えなければならない状態をまねき、慢性的な腰痛に発展させてしまいます。

 マッケンジーエクササイズは腰椎の伸展方向の可動性を回復させ、より負荷の少ない生理的な姿勢をとれるように訓練する運動療法です。

 

 

マッケンジー法による腰痛の病態分類と治療法

  1、Dearangement syndrome(偏位症候群、嵌頓症候群)
    マッケンジ-法では非特異的な腰痛、頸部痛の40~70%が嵌頓症候群と考えられている。     
    椎間板や椎間関節の変性より起こる障害です。
    症状はいち方向の運動(例えば伸展のみ、屈曲のみ)処方によって軽快もしくは増悪がおこりま     す 。       治療は、椎間板や椎間関節の内圧を少なくする。
      椎間板の場合は各種神経ブロック、椎間関節の場合は徒手的調整や椎間関節ブロックで治療      ます。
        必ず痛みを緩和する方向への体操を行ないましょう。   2、Dysfunction syndrome(機能障害(拘縮)症候群)       軟部組織の短縮、拘縮を原因とする症候群.
      組織が損傷を受けて短縮したり瘢痕組織になっていることが原因で痛みを生じさせるもので      す。神経根癒着もこの中に含められます。可動域制限が見られる運動方向に最終可動域まで       動かす運動を繰り返すことで拘縮した組織が伸長して再構築されて、徐々に痛みが軽減す      るが治療に数週間を要します。       所謂、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)である、頸部痛腰痛の約7%と考えられている       
  治療は、マッケンジー法とトリガーポイント法(筋膜リリ-ス)を行う。        3、
Postural syndrome(姿勢症候群)       日常生活での不良姿勢を原因とする症候群.
     本来の組織は正常であるが一定の姿勢を降時間続けることで組織に負荷がかかり痛みが生じる    場合である。もともと姿勢の悪い人に見られ姿勢に対する注意だけで痛みは消失する。     
    
治療は、背骨の猫背の矯正と正しい姿勢の指導です     エクササイズは、正しい姿勢を習得するためのsluch-overcorrect法をう.     これは座った状態でまず腹筋を緩めて猫背の状態でリラックスして10秒数え、今度は腹筋に力を     入れ肩を張り背中を伸ばして十秒保ちます。
     
   以上
の動作を繰り返して行うことで腹筋と脊椎起立筋、広背筋を鍛えて姿勢を良くする効果があ     ります。   
  4、Others(上記3つに当てはまらない病態)     仙腸関節の異常によっておこる痛みが含まれます。仙腸関節機能異常といわれておりAKA法を    始めとする種々の仙腸関節の徒手的調整法があります。

    狭窄症、股関節疾患、分離すべり症、慢性疼痛症候群 などがあります。

 

腰痛のタイプ

腰痛のタイプを次のように分類します。

このタイプによって主にやる運動療法が変わってきます。

 

タイプ1

後屈で主に痛み、後屈がやりにくいタイプ。 前屈で痛みがあることもあるが、前屈のしにくさがないタイプ

後屈エクササイズより前屈エクササイズのほうが効果あり。一部後屈運動にも効果あり

 

タイプ2

前屈で主に痛み、前屈のやりにくさがあるタイプ 。後屈で痛みはあることもあるが後屈のしにくさはない

前屈がエクササイズが効果あり。 後屈エクササイズは多少は効果あることがある。

 

タイプ3

前屈後屈ともに痛みがあり動きにくい。

後屈のエクササイズのほうが効果あり。 前屈エクササイズでも3割の人に有効なことがある

 

 

 

マッケンジー法の実際

-A伸展のエクササイズ----------------------

椎間板性の痛みヘルニアなどではこの療法を行います。
  1、急性腰痛の場合はまずこの姿勢から行ないます。
うつ伏せになることで腰椎に少し彎曲が出来ます。
5分~10分間、この状態を保持します。

こちらはうつ伏せになることがまったく困難でない方や慢性腰痛の方は省いていただいて結構です。

又、この状態をとる事自体が痛みで不可能な場合は以下の運動には進まず、腹の下に座布団やクッションを重ねて入れて、徐々にクッションをとってうつ伏せが出来るようになる事を目指します。
「マッケンジ-法」の画像検索結果
    
2、次に、肘を床につけて、さらに上体をそらし約5分この状態を保持します。

 
 
 
3、さらに腕立て伏せのような反復伸展運動を行います。
 
背筋を使わず、リラックスした状態で腕の力だけで行うことです。

腕を伸ばした後、息を吐き、おなかをしっかり落とすようにしましょう。

10回1セットで、最初の2、3回は注意して行ない、安全確認後続行して下さい。 そして、9回目10回目は肘を伸ばした状態で数秒間静止して下さい。
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 マッケンジーエクササイズでは当初は2~3時間おきに行なうことを推奨しており、立った状態で手で腰を押し出すようにして腰を反らせる方法で代用もできます。症状の改善に伴い1日朝昼晩ぐらいに減らします。多くの機能不全による腰痛が1、2ヶ月で改善します。

 この運動を行う時、元からあったお尻や足の痛み・痺れが減少して、背骨上(身体の中央)に痛みが移行する事がありますがこれは “中央兆候” と言われ、回復に向かう良い兆候です。
 
但し、この運動も痛みが増強する場合がありますからその場合は直ちに中止します。
なお腰が一方向に痛いとき、一方に坐骨神経痛があるときはその痛い方向に腰をずらし椎間板の内圧を軽くする方法もあります。
例えば右側の坐骨神経痛や腰痛がある場合には腰を右側に突き出し、両下肢を左側に向けて上から見て’逆くの字’になるようにします。
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-B屈曲のエクササイズ----------
腰を伸ばして痛いタイプの人はこのエクササイズを行います。次のジャックナイフストレッチとともにためしてください。
 
  マッケンジーエクササイズでは伸展の運動だけでなく、下肢への症状が完全に治まったあと、可動性の少なくなった屈曲の動きを回復させるために屈曲のエクササイズも行います。

 
方法は仰向けに寝て膝を抱きかかえるようにして腰部を屈曲させます。その後痛みが出ない様になれば立位で行なってもかまいません。

また、症状が治まった後、前屈時に身体の傾きが出る方は傾く側の反対側の足を椅子などの台にのせて、立って前屈します。
 
屈曲運動は損傷部位の回復が完了し、下肢症状がなくなってから行います。

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痛みがあるようなら、中止してください。

 

 

ジャックナイフストレッチ 

屈曲のエクササイズ
これはマッケンジ-法ではありませんが、腰を後ろに反らすと痛いタイプの人ののためのストレッチです。
まずしゃがんだ状態で各々の手で両方の足首を持ちます。
次に足首をつかんだまま立ち上がります。膝をこの時伸ばすわけですが、当初はなかなか完全に膝を伸ばしきることはできません。膝が突っ張るわけですが、これを根気強く続けると膝が完全に伸ばすことができるようになります。
  
腰部から臀部にかけてのストレッチとハムストリングのストレッチができます。
椎間関節性の痛みや、腰の筋肉が硬くなっている人、仙腸関節が硬い人などに有効なストレッチです。

いつ、どれくらいするか?

 回数はタイプにあった体操を10回を数時間ごとに行います。 10回を3~5回行うと良いです。 体操を続けた結果、良い兆候が出ればそのまま続けていきましょう。

 

改善が見られない場合

タイプを診断して、それにあった体操をしていくと殆どの方が改善して行きます。 もちろん症状の改善以外にも、日々の予防としてとても効果があります。 3週間続けても、効果が出ない、逆に悪化していく場合はしつこいようですが、中止しましょう。医療機関にかかるべき症状であることが非常に高いです。

 

また、ご自身で判断して行う体操なので慎重に行うことが必須ということだけ知っておいてください。劇的な結果が出る反面、悪化すると大変な体操でもありますので信頼できる先生にマッケンジー体操について相談しておきましょう。