指の基節骨骨折・中手骨骨折(ナックルキャスト)

 石黒先生らは、基節骨・中手骨骨折の保存療法において、外固定を装着した状態で早期
運動療法を行えるMP 関節屈曲位固定でのギプス固定法(MP 関節が70°~ 90°屈曲位をとっ
ていれば、整復の保持には十分であると示している)を推奨している
基節骨の周囲3/4は腱によって覆われているので、骨折部と腱との癒着をつくりやすい。従来の機能的肢位に3~4週間固定すると、下記のような機能障害を残す可能性が高まります。

  1.  MP関節の伸展位拘縮
  2.  骨折面での腱との癒着
  3.  回旋変形
  4.  偽関節

MP関節屈曲位での早期運動療法(ナックルキャスト)は基節骨や中手骨の骨折に対して適応がある.MP関節屈曲位で整復を保持し,積極的な指の屈伸運動を行わせることによって腱との癒着を防止し,骨癒合や関節可動域の早期獲得ができる方法である.MP関節屈曲位での早期運動療法(ナックルキャスト)は基節骨や中手骨の骨折に対して適応がある.

(日本整形外科学会雑誌 Vol.91 No.7 July 2017)


 
 
上図がMP関節屈曲位での早期運動を可能にするナックルキャストという外固定です。




中手骨骨折では頚部骨折の頻度が高いですが、30~40度の屈曲転位を残しても、しっかりした握りが可能なら機能的問題はありません。ナックルキャスト作成の要点は下記のごとくです。

  1.  徒手的に整復し、指を最大屈曲位に保持して回旋変形のないことを確認する
  2.  MP関節を屈曲位に保持する
  3.  約5センチ幅のソフトキャストを使用する
  4.  手と指の背側部分を折り返して厚く巻き、指の掌側部分はできるだけ薄く巻く
  5.  術者は片手の母指を患者の掌にあてがい、もう一方の術者の掌で患者の指を圧迫してMP関節の屈曲位を保持
  6.  余分なギプスを除去する

受傷後4週間行います

引用文献
1)石黒 隆:指節骨・中手骨骨折の後療法.MB Orthop.21(11):159-164,2008.