肥厚性瘢痕、ケロイド

きずは、通常2週間以内に治癒しますが、その後も約半年間にわたり変わります。約1カ月後には硬くなって赤みを帯びますが、その後、数カ月間かけて徐々に軟らかくなり、色調も周囲となじんでいきます。

 

ところが、何らかの理由によって正常な創傷治癒の過程が障害を受けると、きずが治らずに慢性化したり、異常な治り方をしたりすることがあります。
        肥厚性瘢痕・ケロイドは、外傷や手術による創傷が長い時間のうちに硬化して盛り上がり、かゆみや痛みの症状が出現した状態です。きずが関節にまたがるような場合には、関節の拘縮をきたし日常動作に不自由が出ることもあります。       

肥厚性瘢痕:もともと存在したきずあとの範囲を越えて拡大することはなく、その部位で隆起・硬化します。長い時間をかけて自然に縮小することがあります。

ケロイド:もともと存在した範囲から徐々に拡大する傾向があり、周囲の皮膚には発赤を認めることが多い。ケロイドは徐々に拡大し続け、自然に治ることはほとんどありません。顕微鏡の検査で特徴的なコラーゲン線維の束を認めることもケロイドの特徴の一つであると言われています。「ケロイド 治療」の画像検索結果
        

病因

肥厚性瘢痕やケロイドはなぜ発生するのかは不明です。
しかし個人の体質が関連していることが知られています。

 同じような怪我や手術を経験しても、肥厚性瘢痕やケロイドを生じる人、きれいに治癒する人がいます。また、同じ個人であっても、小学校高学年~思春期に生じやすく、高齢になると生じにくいという年齢的な要素もあります。

肥厚性瘢痕・ケロイドも一種のアレルギーと考えられます。
         また同じ個人でも身体の部位によって肥厚性瘢痕やケロイドを形成しやすい場所、しにくい場所があり、前胸部、背部、下腹部は生じやすく、手掌や足底、顔面、頭部、下腿などには発生しにくいと言われています。
外傷や手術後(特に1~2カ月のうちに)、活発な運動によって皮膚伸展が反復された場合や、きずあとが化膿して治癒するまでに時間がかかった場合などには肥厚性瘢痕やケロイドが生じやすいことが知られています。

 

治療

予防

 外傷や手術後の皮膚にかかる牽引力をふせぐ工夫やアレルギーを抑える治療を早期に開始することによって、発生をある程予防することができます。
以前の手術で肥厚性瘢痕やケロイドができてしまった患者さんについては、形成外科を受診して、手術の際には、最後に皮膚を縫合する手技を形成外科が担当することがあります。また、きずが硬く盛り上がりつつある場合には、外来で早めに後述のテープや注射を開始することによって、進行を最小限に留めるための治療を行うこともあります。。

 

抗アレルギー薬の内服

肥厚性瘢痕やケロイドの発生・進行やかゆみ・痛みなどの症状には、アレルギー反応が関与しており、抗アレルギー薬を内服することによって症状の減弱効果があることが知られています。

トラニラスト内服は主に補助治療として用いられる。

 

ステロイド含有テープの貼付

副腎皮質ステロイドには多彩な作用があることが知られていますが、皮膚においては炎症を抑制する効果、組織を萎縮させる効果などがあります。肥厚性瘢痕やケロイドの部分に常時テープを貼付することによって、かゆみ・痛みの症状軽減、盛り上がりや発赤の改善などの効果を認めます。
効果が出始めるまでに約1カ月を要すること、病変から正常皮膚にはみ出して周囲皮膚に影響を与えることがあります。

ドレニゾンテープ(ステロイド剤含有テープ)による肥厚性瘢痕の治療を行う

 肥厚性瘢痕が平坦になり,色調が白っぽくなって目立たなくなれば治療(=テープ貼付)終了。

 瘢痕表面に毛細血管拡張が見られたら貼付を中断し経過観察(毛細血管拡張はステロイドによる副作用)。軽度の  毛細血管拡張であれば経過観察で消退していくであろう。

  運動障害を伴う肥厚性瘢痕は自然に軽快することはほとんどないようだ。

リザベン内服が使われることもある。

 

ステロイド薬の局所注射

ある程度の厚みがある病変では、テープの薬効が深部まで届きにくいという難点があります。そこで、ステロイド薬を瘢痕の中へ直接注射する治療法があります。通常3~4週間に1回の頻度で注射を行います。肥厚性瘢痕の多くは1~2回の注射によってかゆみや痛みが軽減し、病変が平坦化します。

ケナコルトという注射を打つことが多いようです。0トリアムシノロン懸濁液 10mgをアドレナリン添加リドカイン液1ml程度で希釈し一回分10mg  以内を目安とし1か月ごとに皮内注射器を使用してゆっくりと注射する。毛細血拡張や皮膚の萎縮の合併症に注意する。赤色長が薄れ平たん化して来たら少しずつ治療間隔を延長する。6か月以上注射間隔をあけることができるようになれば寛解状態と考えられる。かんかい状態になっても完全治しているわけではないので3~6か月ごとに診察して再発がみられるようなら注射を再開する。

 


肥厚性瘢痕やケロイドの皮膚は知覚が過敏になっていることが多く、痛みを伴う注射です。硬い病変へ注射する前に周囲皮膚に局所麻酔の注射を行うことによって全体的な痛みを最小限にできます。

 

手術

病変の範囲が広くない場合には、手術治療によって肥厚性瘢痕やケロイドを切除する場合があります。

これは多くは形成外科にて行います。

手術の際の工夫で皮膚に緊張がかからないようにすること、手術後のテーピングによる創部の安静、抗アレルギー薬の内服などにより再発を予防します。

肥厚性瘢痕やケロイドの治療は長期間にわたることが多くなります。