知覚異常性大腿痛
(メラルジア・パレステティカ)
ベルンハルト病ともいわれる。しばしばみられる。
大腿外側皮神経が大腿筋膜を貫通する部位での絞扼性神経障害と思われる。大工で腰に重い道具を支えている人はこの症状が起きることがある。原因不明のことも多い。上殿腸骨棘の筋膜あたりに圧痛を認めることが多い。
大腿近位外側、または股関節前面外側あたりの知覚障害と上前腸骨棘内側または内側下方を押さえると痛む。治療として局所麻酔薬とステロイドの注射を大腿外側皮神経が大腿筋膜を貫通する部位におこなう。よくならなければ、神経剥離術がおこなわれることもある。
 
閉鎖神経絞扼性障害 股関節前面、鼠径部、大腿近位内側あたりのハッキリしない痛み。時に大腿内側の痛みを訴えることもある。股関節が痛いと訴えることもある。原因不明のことが多い。
鼠径靭帯の陰部よりの内転筋起始部外側のくぼみを閉鎖孔に向かって圧迫すると深部に圧痛を訴える。
治療としては局所麻酔薬とステロイドを少し多めに深部より浸潤させる。
 
大腿神経絞扼性障害 稀であるが、鼠径部より大腿前面あたりの部位のはっきりしない痛みを訴える。鼠径靭帯下、鼠径動脈のすぐ外側に大腿神経が走っており、ここを押すと痛みを訴える。圧痛点に局所麻酔薬を浸潤させて症状の消失をみる。
 
腸骨鼠径神経絞扼性障害 下腹部より大腿内側に放散する痛み。股関節前面あたりの痛み。陰嚢、大陰唇の知覚障害がでることもある。稀である。
腸骨鼠径神経は内外腹斜筋間をはしり、鼠径管を通り、陰嚢、大陰唇の知覚を支配する。

陰嚢、大陰唇の知覚障害が認められれば、上前腸骨棘の内上方
2横指あたりを中心に圧痛点がある。この部に局所麻酔薬を浸潤させる。
 
腸骨下腹神経絞扼性障害 稀ではあるが、股関節前面あたりの痛みを訴える。鼠径靭帯の直上内側の恥丘の知覚障害がでる。上前腸骨棘内上方3横指くらいに圧痛点がある。治療はこの部に局所麻酔薬を浸潤させる。
稀に腸骨稜後方からの骨採取後の瘢痕により外側皮枝が絞扼され、臀部外側の痛みを訴えることがある。
 
伏在神経絞扼性障害 立ち座り、階段昇降がしにくいと訴え、膝関節内側の痛みを訴える。小児が昨夜、急に膝が痛いと訴えて泣き、寝なかったが今朝はケロリとしているといって連れて来られた場合、膝蓋下枝の伏在神経絞扼性障害であることが多い。稀に小児の膝痛大腿部痛の原因として潜在性二分脊椎に伴う終糸緊張症候群であることもあり鑑別が必要。
大腿真ん中やや末梢内側部に圧痛店があり、膝蓋骨内下方あたりに痛みと知覚障害がある。知覚障害は下腿内側から内踝部にかけてあることもある。
治療は圧痛点に局所麻酔薬を浸潤させる。
 
 
 
総腓骨神経絞扼性または圧迫障害 しばしばみられる。膝の後外側や、下腿外側~足背中央、第1から第4趾背側の異常な痛みや知覚障害を訴える。運動麻痺を主訴として来院することは稀。
圧痛点の出やすい場所:
①大腿二頭筋腱下を出るところ。
②大腿骨外側顆後方。
③脛骨外側顆後上縁上。
④腓骨頭後方。
⑤腓骨頚部外側への入り口。
⑥腓骨頸外側を回る部分。
⑦浅腓骨神経(中間足背皮神経)外踝上縁4横指あたりで腓骨のすぐ前方で筋膜を貫通して皮下にでるところ。

圧痛のある部位に局所麻酔薬を浸潤させて症状が消失するかどうかを確認する。